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ノンケ

女の子しかいないマンガを紹介します.有名なものより,手に取ろうか迷いそうな物を紹介していきたいと思います.

『双角カンケイ。』(1,2)

 

 

 

双子の姉妹のひまりとあいり。二人は親族じゃなければ見分けがつかない程に瓜二つ。昔は何をするにも一緒だった。妹のあいりは、姉のひまりが次第に自分とは何もかも別々になってしまっていたことを憂いていた。

そんな中、あいりはひまりの身代わりにアルバイトに出ることに。

そこで出会ったひまりの先輩の朝霧ちさきから人違いで告白されてしまう。

正体を隠したままの数奇な恋の始まり。

以下解説(考察?)に多少のネタバレを含む

 

まずこの本のジャンルであるが、所謂ドロ百合という奴である。

私を含め、生温く易しい世界を読み慣れた読者には少しばかり刺激が強い。

とある百合厨は言う、「ドロ百合こそが本質的な百合である」と。

そもそも百合漫画の本質は”自己の幸福実現”にあるとの事だ。

この漫画、そういった意味で言えば真に百合らしい百合であると言える。

2巻完結で展開が超スピードであるものの、かなり哲学的である。

姉のひまりにはいつまでも妹のあいりと”同一”でいたいという歪んだ欲望があった。しかしとある幼いころの日、その欲望が打ち砕かれる事件が起きる。そこから二人は”同一”の存在ではなくなり、それぞれのパーソナリティを持った”ひまり””あいり”に変貌する。それは、同一である事を諦めたひまり自身が自ら望んでバイトを始めたり違う友達と遊んだり等でそうしたのである。

この1件がこの漫画の闇の根源を司っている。

この漫画なんと、最終的にはあいりが”ひまり”、ひまりが”あいり”になってしまうのだ。

世にも奇妙な物語的で、何を言っているのか分からないとは思うが解説しよう。

あらすじに書いた、朝霧先輩に人違いで告白された件。バイト先の先輩であることと、そのバイト先の仲間に朝霧先輩と一線を超えた関係になりたいという人(ここみんと言う)をひまりが応援していた、という理由があった。その為、あいりはその場でひまりであり続け、ひまりには知らせていなかったのだ。

きっかけは些細な事だったが、これを境にあいりは次第に最終段階の”ひまり”へと変貌していく。

1巻では朝霧先輩の前では、ひまりに成り切ろうとするあいりの姿を中心とした冷や冷や系心臓バクバク類ラブコメが展開される。この展開が次第に、あいりの朝霧先輩への本気の恋心を発現させる。

そして2巻。

あいりは2巻で朝霧先輩がボディペイントされそうになっている所を助けることになる。この1件であいりは朝霧先輩が好きな”ひまり”と”同一”になっていた。実は朝霧先輩が”ひまり”に助けられたのはこれが2度目である。1度目はあいりがひまりの身代わりになるより前、バイト先で失敗した時に”ひまり”の言葉に助けられたのだ。つまりこれが何を意味するのかと言うと、朝霧先輩の中の”ひまり”は『あいりであり、ひまり』である存在になったのだ

そして、あいりの今まで隠していた全てがひまりにバレる。この時点でひまりの過去の”同一存在”になるという欲望が打ち砕かれたエピソードが再燃される。

あいりはひまりのことを「私とは反対で私の自慢のお姉ちゃん」と呼び、それがあいりと”同一”でないという事を自覚してしまったが為にかつてのひまりは絶望した。ひまりは自分が叶えられなかった欲望を軽々しく叶えていたのだ。過去に、”ひまり”ではないとはっきり言ったあいりが今”ひまり”となっているのだ。

そしてラストシーンへ。憤りを発現させたひまりは朝霧先輩を使ってある実験をする。朝霧先輩にとっての”ひまり”はどちらなのか。結果、上記したように朝霧先輩の中の”ひまり”は、あいりだった”ひまり”とひまりだった”ひまり”のエピソードより、『あいりであり、ひまり』だった。つまり、朝霧先輩を通して、あいりとひまりは”同一存在”になっていたのだ。ひまりはその場で嬉し泣き。実はまだ同一存在になる事を諦めてなどいなく渇望していた事を身をもって確信する。そして、「今日から私はあいりだよ。」と、”あいり”となる決定をする。これがひまりにとっての幸福だったのだ。

そして最後のシーン。”ひまり”となったあいりが”ひまり”として生きているシーンをもって終了。

 

当タイトルをバッドエンドと評している評論は多くある。2巻完結で展開もかなりハイスピードであり、最後の煮え切らない感じがあるからであろう。

しかし私は、”トゥルーエンド”であると評したい。人の幸福は端から見て歪んでいたとしても、矯正する事が真の幸福にはならない。そして、歪な願いは実現するならばそれ相応の代償がいる。しかしその代償を払ってでも、実現する事で真の幸福が得られるのだ。という事が本書のメッセージであると私は捉える。

 

…以上がこの漫画の真相であり、「双角カンケイ」と名乗る女達の戦いの真実である。

この戦いに正義はない。そこにあるのは、歪な願いだけである。

 

百合度:MAX

ノンケ度:★★☆☆☆

ストーリー:★★★★★

イラスト:★★★☆☆